世界一周三日目 ベトナムでバックパッカー気分に浸る
まだ眠り足りない。
頭の中で、カウントダウン。勢いをつけて、重い体を起こす、今日は起きなければならない理由がある。朝発の飛行機に乗って、ベトナムに向かうからだ。
散らかした荷物をまとめ、リュックに詰め込む。忘れ物をしたら、取りに帰ることは出来ないので、念入りに。
まだ台北の夜が明ける前、朧げな光に包まれるなか、重たいリュックを背負いバス停へと歩く。
学生時代、部活動をやっていた私は、週5日朝5時に起き、練習へ向かっていた。冬の時期に静かな朝を抜け、グラウンドから見る夜明けが、そして朝日が私の青春の情景の一つであった。この時間は好きだ。特別な気分になる。
台北駅から桃園空港まではバスで50分ほど。最近は成田エクスプレスにあたる電車が通っているので、早朝深夜を除けば、35分ほどでたどり着くことができる。
物思いにでも耽ろうかと思っているうちに、気が付けば意識は飛んでおり、空港についていた。寝れるときには、寝る。起きるべき時間を全力でいきるためには、重要なことだと思う。ただし、身の回り品には気を付けるなければならない。
さくっとチェックインを済ませ、搭乗ゲートへと向かう。旅行は進んでいく、2ヵ国目のベトナムへ。
今回乗るのはベトジェット。旅行の予算は約100万円。食費を切り詰めれば、必要十分な予算だとは思うが、食に人生の重きを置く私には、そんなこと到底できるはずもない。旅費を大幅に削る一番簡単な手段は、交通費を抑えることだ。そんな時にLCCは、旅行者の力強い味方であると思う。
あっという間の空の旅。ベトナムはホーチミンに到着。今回はこの国で年を越す、初めての海外での年越しだ。「ゆく年くる年」を見ずに年を越せるのだろうか。
飛行機の扉が開き、地上に降り立つ。日本とはもちろんだが、台湾とは空気が違う。飛行機から出た瞬間、或いは空港から出た瞬間、この異国の空気に、触れた瞬間が好きだ。
さくっと荷物を受け取り、空港を出る前にベトナムの紙幣を入手し、SIMカードの手配を済ませる。ちなみに1円が0.005ドンほど。多くの0が並ぶこの紙幣を、使いこなすことができるだろうか。
中心街に向かうバス停を探し、空港を出る。その瞬間、多くの人の目が私を捉えた。実際はどうか分からないが、少なくとも私にはそう思えた。家族の帰りを待つ人、ホテルの迎えを待つ人、そして、タクシーの運転手。カンボジア以来の東南アジアの雰囲気に圧倒されつつ、歩を進める。ひっきりなしに話かけてくるタクシーの客引き達の波を潜り抜け、ようやくバスに乗車することができた。
ようやくバックパッカー御用達のエリアであるブイビエン通りに到着し、ホテルを探す、が、まったく見つからない。辺りを見渡すが、目的のホテルらしきものがまるで見当たらない。ツアー会社のようなものがあるのみだ。すると、近くにいる小柄な若い男性が話しかけてきた。私は彼を客引きと判断し、強い警戒心を持って接した。恐らく彼にも、警戒していることが伝わるほどの対応だ。大きなリュックを抱えて、きょろきょろとしている日本人などカモでしかないのだから、そうせざるを得ない。
彼は流暢な英語で、「ホテルを探しているのか、それはスイートバックパッカーズインというではないか」といった。彼は私が探しているホテルのスタッフであった。何とも失礼な対応をしてしまった私を、笑顔でホテルに迎えいれてくれた。
結果的には、朝ごはん付き、更に夜には瓶ビール又はコーラを一本くれるサービス付きで一泊800円前後。スタッフは常に笑顔で接してくれ、立地もバックパッカー通りのど真ん中という最高のホテルであった。ホステルが大丈夫な人ならば、ぜひおすすめしたい。次にホーチミンに行く機会があれば、もう一度このホテルに泊まりたいと思えるホテルだった。
実は今回、基本的には予めホテルは予約しながら旅をしている。そもそも最安を求める必要はなく、観光する時間を考えたら、現地でのホテル探しの時間は惜しいと考えたからだ。期限のない旅であれば、いいのだが、私の旅行はそうはいかない。それに好条件のホテルは、大概埋まっているか、価格が上がっている。
荷物を一式、ロッカーに突っ込み、南京錠をつける。鍵をかけるといっても、貴重品は大概持ち歩くことになるため、ロッカーのなかには衣類程度しかないため、盗まれるリスクは低いだろう、否、盗まれたとしてもリスクは低いだろう。もちろん盗まれたら、困るのだが。
さあ、荷物も仕舞ったことだし、散策をしつつ食事に向かう。目的はフォー。ホテルまでのバスの車内で調べた、近くにあるという有名店に向かう。
歩いて5分ほど、ブイビエンのエリアの角っこにそのお店はあった。注文システムは分からないが、とりあえず空いている席に座ったらメニューを持ってきてくれた。とりあえず、上の方に載っているフォーと、タイガービールを注文。旅先だ、昼から飲んでいけ。
フォーーーは優しい味だが、間違いない美味さだった。唐辛子がトッピングについてくるので入れる。写真の右の方に浮いているものがそうだ。これが、失敗。食べるものではなかった。辛み、というより痛みに耐えつつ、フォーを食べる。正直、途中から味はわからなかった。
何とか食べ終え、ビールを流し込む。もう二度と唐辛子を食べないことを心に決め、街歩きをすることに。今日はもう、日暮れも近いのでホテル近辺のエリアを練り歩く。
しばらく歩いていると、お腹がすいてきた。昼は確実に美味しいものを食べてしまったので、夜は何かわからないものを食べるべく、レストランや露店を見て回る。
なんとなく、キレイなお店には入りたくない、観光客が多い店には入りたくないと思っていると、一心不乱に何かを焼き続ける男性が目に留まった。彼の丁寧な仕事ぶり、食事スペースのローカル感。決めた、ここにしよう。
やいた肉やマカロニを、左にあるタレにつけて食べるのだが、美味かったかと言えば、正直普通。だが、このローカル感のなかにいる時間はたまらない。食事をつくってくれた彼には「ごちそうさま」と言いたくなる一食だった。
アルコールのないお店だったので、1杯ひっかけにメインストリートへ。通りには同じようなカフェが立ち並び、そこら中で白人バックパッカーたちがビールを飲んでいる。
異国の地で、酒を飲みながら夜を過ごす。特にやることはないが、優雅な時間。日本は年の瀬だが、気温もあってかそれを微塵も感じない。
さて、明日は終日観光ができる。元気に行動するためにもそろそろ眠りにつく。
それでは、また明日。